高校生VSジャンボタニシ!お米をめぐる熱き戦い
ここは、京都洛西・大原野(おおはらの)。
山の麓に美しい田園風景が広がる、市内有数の農業地帯です。
そんな平和な大原野を揺るがす「厄介者」。
それが、「ジャンボタニシ」です。
コメ作りの大敵・ジャンボタニシ
ジャンボタニシとは、南米原産の巻貝のこと。1980年代に、食用として養殖するために輸入されたものが、野生化した外来種です。(正式名称は「スクミリンゴガイ」で、実はタニシではありません。)
その名のとおり、成長すると、ゴルフボール以上に大きくなるほど、食欲旺盛。植えてすぐの柔らかいイネを、むしゃむしゃ食べるので、コメ作りに深刻なダメージを与えています。
爆誕!「ジャンタニバスターズ」
大原野では、10年以上にわたり、農家さんたちが、ジャンボタニシ退治に奮闘されています。
何か私も応援できないかな?と考えていたところ、近くの洛西高校に、何やら「Links同好会」という部活動があるという情報が。生徒の皆さんが、地域の魅力や課題を調べたり、フィールドワークや地域の行事等に参加することで、地域と「つながる」活動をされているそう。…素敵!
と同時に、ジャンボタニシを肥料にするという研究事例の情報もゲット。
Links同好会や農家の皆さんと検討を重ね、ジャンボタニシを捕獲し、大原野の放置竹林から出た竹とブレンドして肥料にするプロジェクト、その名も「ジャンタニバスターズ」が、2022年からスタートしました。
いざ捕獲!
令和6年5月29日、快晴の空の下、2024年の活動がスタート!
水の中で、ウネウネ動くジャンボタニシをせっせと捕獲します。
日々の喧騒から離れ、無心で拾うジャンボタニシ…不謹慎かもしれませんが、これが案外、大人も楽しいのです。
1時間足らずで、バケツいっぱいのジャンボタニシが集まりました!
捕ったジャンボタニシは、竹と一緒に焼いて肥料にします。
じゃじゃーん!ジャンボタニシ肥料の完成です!
カルシウムなどが含まれた肥料は、洛西高校の校内にある畑などで、利用されています。
年々進化する「ジャンタニバスターズ」
捕獲機を手作りしたり、肥料で栽培実験をしたりと、ジャンタニバスターズの取組は年々進化中。
そして、3年目となる今年は、ついに1年生が全員参加する課外活動へ昇格を果たしました!これまでは、生徒の皆さんは自由参加型で、Links同好会のメンバーが中心になって、捕獲を頑張ってくださっていました。
ですが、捕っても捕っても出てくるジャンボタニシ。こうして、大人数で対抗できるのは、ありがたい限りです。結果、8月までの約10回、参加人数延べ270人が、大原野の田んぼで30kg超のジャンボタニシを捕獲しました。
Links同好会・顧問の河本(こうもと)先生に、参加した1年生の皆さんの様子を伺ってみました。
(河本先生)1年生を全員参加にした「ねらい」は、生き物とのふれあいや土の感触を通じて、楽しみながら地域のことを知り、農業をはじめ、色々なことに興味を持つ、きっかけになればと思ったからです。実際のところ、田んぼに行くまでは、面倒くさそうにしている生徒たちもいました。ですが、活動を終えた帰り道は、「楽しかった!」と口々に話していました。ジャンボタニシを夢中で探したり、カエルや別の生き物を発見したりすることを体験しながら、教室では味わえない、フィールドワークのおもしろさを感じてくれたようです。
完全になくすことは難しくても
こちらは、大原野の米農家の小原(こはら)さん。
大原野の全体の自治会活動を束ねる長でもあり、洛西高校生の課外活動をはじめ、様々な地域の活動を、温かく見守っておられます。
(小原さん)ジャンボタニシが現れたことで、植えるタイミングを工夫したり、水路からの侵入を防いだりと、作業が増え、農家の皆さんは苦労されています。ジャンボタニシは、繁殖力も強く、完全になくすことは、むずかしい状態です。そうした中で、高校生の皆さんに、助けていただいて、本当にありがたいですね。ジャンボタニシを通じて、自然に親しんで、少しでも農業に興味を持ってもらえたら、うれしいです。
稲刈りシーズン到来!
ジャンボタニシも元々は人間によって持ち込まれたもの。
コメ作りにとっては「厄介者」である一方で、「被害者」なのかも知れません。
「ジャンタニバスターズ」の取組は、高校生の皆さんに、自然と人間との関係を考える機会になっているのではないでしょうか。
そして、コメ作りの敵は、ジャンボタニシだけではありません!
田んぼには、シカもイノシシもやってきます。
年々厳しくなる暑さも、敵と言えるかもしれません。
農家の皆さんは、日々、色々な敵と戦いながら、コメ作りに汗を流してくださっています。
はからずも、この夏突如発生した、コメ不足。
お米のありがたみを感じている方も多いのでは?
たわわに実った稲穂があちこちで目に入るようになり、私自身、いつも以上にうれしく感じています。
さぁ、大原野にも稲刈シーズン到来です!