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木を使って森を守る。京都の森の未来に今できることとは?

「木を伐るのは自然破壊では?」

大学などに「出前講座」に伺うと、学生さんから必ず聞かれる質問です。
アマゾンでの乱開発など森林破壊の衝撃的な映像が、記憶に根付いているのかも知れません。

実は、人の手で植えられた人工林は、伐って使うことが不可欠なのです。


京都の森林

京都市は、市の面積の約3/4が森林です。
そのうち約4割が林業のために、人の手で植えられた人工林
千年以上、都であった京都では、建物を建てたり、橋を架けたり、薪にしたり、大量の木材が必要でした。

まちの周囲をぐるりと囲む“京都三山”には、そんな都の暮らしを支えるスギやヒノキを中心とした林業が盛んに行われてきたのです。

しかし、時代と共に燃料は木から化石燃料に。建物も木造からコンクリート造に代わりました。
その結果、木材が売れず、使われずに放置される森林が増えました。

京都を代表する北山杉の美林景観

森林を放っておくと何が困るの?

実は、人の手で植えられた「人工林」は、40年~50年で伐採し、植え替える必要があるのです。

ほったらかし森林の3大リスク

倒木
人工的に植えたスギやヒノキは密接して植えるので、成長に合わせて間引く作業をしなければひょろひょろに。放っておいたら台風などで倒木被害をもたらします。

花粉症
春の脅威・花粉症。スギやヒノキも大きな発生源です。樹齢20年ぐらいから本格的に花粉を飛ばし始め、そのまま放っておけば花粉を大量にまき散らします。

土砂崩れ
森林の木や下草は、降った雨をクッションのように受け止めて、山の土が流れないように抑えています。放置された人工林は日光を遮り真っ暗で、地表に草木の根が張らず、土砂を留める力が落ちてしまいます。近年の大型台風や集中豪雨で更にリスクは高まります。

樹木も生き物。呼吸をしています。
皆さんご存じのとおり、
木は二酸化炭素を吸収し酸素を生み出してくれます。
しかし、それって永遠じゃないんです。
成熟した木は、酸素を生み出す量が減り温暖化を抑える効果も低下します。

人工林を放っておくと、いろいろと“困ったこと”が起こるのです。

令和2年7月豪雨によって、京都市内で発生した大規模な土砂崩れ

今、私たちに何ができるのか?

人工林は林業のために植えられたもの。
そのほとんどが個人がお持ちの資産です。

木を育てて、伐って売ったお金で苗木を買って、また植える。
きちんと人の手で管理し続けられる仕組みをいかに作るか、維持するかがとても重要なのです。


【ふるさと納税】森林の応援団づくり事業

京都市では「ふるさと納税」の仕組みを活用し、京都の森林を使って守る民間の取り組みをみんなで応援する「森林の応援団づくり事業」に取り組んでいます。

産業観光局農林振興室林業振興課
 私たちは京都の豊かな森を守り、暮らしと文化を未来へとつないでいくためには、様々な分野で森林の利用・活用を進め、森林の担い手を増やし、森林をもっと身近なものにしていくことが必要だと考えました。

市民の皆さんが暮らしの中で身近な木や森林を使おう。
森林に関心を持って応援していこう。
そのお一人お一人の小さな一歩が、森林と暮らしを守るのです。


今年のチャレンジをご紹介します!


🌲危険木の再利用で脱炭素や環境負荷抑制に貢献する!

倒木の恐れがある「危険木」を特殊な技術で伐採する株式会社アーボプラスの飯島さん。
曲がっていたり腐っていたりして、建材や家具などにはできない木を、薪や堆肥に加工して、地元の方や農家さんに再利用してもらう取り組みです。

特殊伐採の様子

【資金の使途】
・薪割り機の購入・設置、堆肥の作成
【目標金額】100万円
【返礼品】あり

株式会社アーボプラス 飯島さん
50年以上頑張って育ってきた樹木を我々が手を尽くして伐採しますが、そのまま処分されてしまうのは本当にもったいなく寂しいです。そんな材を利用できる形に変え、地域の方々に少しでも自然の恩恵として還元できたらと思いプロジェクトを立ち上げました。


🌲苗木生産、植林事業で豊かな森林を次世代に!

木を伐った後は苗を植える「植林」が必要ですが、人手不足で難しく放置森林が増えています。そんな課題を解決するため、植樹用の苗木の生産、植林事業を行う取組です。

苗木の植林

Reフォレスト 中井さん
京都は豊かな森林が多く、木材生産だけでなく景観として重要な観光資源の1つとなっています。 しかし、森林の中には適切な管理方法がわからず、所有者が放置して荒廃している場所や病害虫により枯れてしまうといった被害が出ています。 森林は、家を建てるのに必要な木材を生産したり、美しい景観を形成するなど私たちの生活を支えています。 この自然豊かな森林を次世代に繋げていくためにも、応援よろしくお願いいたします。

【資金の使途】
・苗木生産設備の導入
・植林事業に必要な設備の導入
【目標金額】100万円
【返礼品】あり


🌲折り畳み椅子で日本の文化を継承し、京都の森を守る!

暮らしの中に身近な木材を取り入れることが森を守ることにつながります。「仕舞う、畳む」日本の文化を構造で表現する折り畳み椅子を、京都市内産のヒノキで制作。京都の木材の利用の拡大とブランド力の向上に繋げる取組です。

おしゃれな折畳み椅子(写真は広葉樹のもの)

平山日用品店 平山さん
皆さん、紐蝶番はご存知でしょうか?昔から屏風(びょうぶ)にみられる日本文化に馴染み深いものです。私達はこの機構を用い、世界で唯一の折り畳み椅子を作っています。現在は外国産の木材で作っていますが、日本を代表する木材であるひのき製にする事で、さらに日本文化を表現し、京都の森を守りたいと考えています。

【資金の使途】
・針葉樹を加工する機械設備の導入
・京都産ひのき家具の広報
【目標金額】100万円
【返礼品】あり


🌲子どもの生きる力を育む森づくりを!

薪を使ったテントサウナの体験や木工クラフト体験を通じ、森林の魅力について親子で体験できる野外保育プログラムを実施します。遊びから森林整備へ。未来の森に関わる担い手育成を目指します。

一般社団法人森のようちえん どろんこ園さん
自然の中でのびのびと自分らしく、生きる力を育む活動です。森を整備し、森の恵みで楽しむことは、環境教育の素晴らしいスタートです。大人も子どもも共に楽しみながら育ち合う場は、子育て支援にもつながります。あたたかいご支援をよろしくお願いします。

【資金の使途】
・伐採や木材運搬
・森歩き、薪割りの体験やテントサウナ購入
・SNS運用と削り馬などの製作指導
【目標金額】65万円
【返礼品】あり


🌲森林に関わる楽しさを!木育キットから未来の森林の担い手を

京都市内産の木材を使った木育キットを開発。
そのキットを活用したワークショップの開催や、「森林浴さんぽ」を実施します。木や森と触れ合うことは楽しいという感覚を育て、未来の森の担い手を育てることを目指します。

木育キットのイメージ

やまぐに(林業女子会@京都) 稲田さん
私たちはこれまで、「森の魅力を知る人を増やし、森林資源活用の可能性を広げる」ことを目標に、森歩きやクラフトワークショップの提供、森に関わる方を招いてのお話会といった、森に興味がわく一歩目を作る活動をしてきました。今回、森に親しむきっかけになると共に感性や主体性を育む「木育キット」を開発するため、初のクラウドファンディングに挑戦しています。

【資金の使途】
・木育キットの開発
・木育ラボの実施
・やまぐにの活動の周知・PR
【目標金額】95.2万円
【返礼品】あり


森林を育てることは、未来を育てること。

国土の約7割が森林の日本。
京都が抱える課題は、日本が抱える課題でもあります。

きれいな水や空気を生み出すなど、
森林は私たちの命と未来を支えています。
京都発の挑戦が、日本の森林を元気にしていきます。

みなさまの温かいご支援をお願いいたします!

📝ヒロ(市長公室広報担当)
広報担当2年目の職員。私は木製品が大好きです。パソコン台も市内産の木製です。卵形の木の玉を、ニギニギするのが安らぎです。花粉症に苦しみながらも木を握る。これは癒しか憎しみか。伐って使ってまた植える。これで空気もまた増える?みんなで森を守りましょう。