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ちょっと新しい京都の歴史探訪。市電の足跡を辿ってみた。

先日、京都市公式noteでは、平安神宮さんに保存されている京都市電二号電車(通称:N電)を取り上げました。

この記事を書くためには、市電の歴史を知らねば!と私、
その痕跡を探して市内を歩き回りました。

猛暑の中を汗と気合を握りしめ、せっかく歩いたこの時間、そうだ、いつもとちょっと違った視点での京都探訪をご案内するのも良いんじゃない?
ということで、今回記事にまとめました。


市電の痕跡をたどる

明治28(1895)年、日本初の路面電車が、現在の京都駅から伏見の間を走ります。
その後、“京都市電”として路線を広げ、市民の足として、京都の暮らしと産業を支えましたが、昭和53(1978)年、自動車の普及などにより、惜しまれつつも全廃されます。

それから46年が経った今でも、ありし日の市電の痕跡がまちの中に残っています。

🚩出発!京都駅

↓ (徒歩3分)

🚩1|電車鉄道事業発祥の地


京都駅前北西、東洞院通と塩小路通の交差点角に「電気鉄道事業発祥地」と記された石碑があります。
ここは日本初の路面電車の起点となった場所。
昭和50(1975)年、開通80周年の記念として、当時の国鉄(現:JR)をはじめ関西の私鉄6社などと鉄道友の会の皆さんによって建てられたものです。
南海電鉄や阪神電鉄など、京都には乗り入れていない鉄道会社も名を連ねているのが驚きです。

路面電車の成功が今日の新幹線にまで発展することになったと記される。

京都駅
↓ 
(地下鉄烏丸線)
くいな橋駅

🚩2|竹田橋(伏見区)


「くいな橋」駅から徒歩約5分。
鴨川沿いを歩いていくと1本の橋が見えてきます。

竹田橋(堤防上から)歩行者・自転車専用

パッと見たら「普通の橋」ですが、近くによると何か「普通じゃない」。
実はこの橋は、元・市電の線路が支えているんです!

橋脚をよく見たら、急カーブが多い市電を導くために付けられた「溝」など、市電の特徴が確認できます。

縦に入る溝。車輪がはまって電車を導く。

今ではサビサビですが、よく見たら
LORAIN STEEL CO MADE IN USA O 92 358 1930
の文字も読み取れます。
1930年にアメリカの製鉄所で作られたことが分かります。

橋脚(元線路)に記された刻印

製造から約100年、川の流れに耐えながら、京都の暮らしをしっかりと支えてくれているんですね。

くいな橋駅
↓ 
(地下鉄烏丸線)
九条駅

🚩3|架線柱(南区)


「九条」駅から西に向かって徒歩約5分で、市バスの九条車庫があります。
ここは元々市電の車庫だった場所です。

その出口すぐの信号機。
柱の上をよく見たら少し形が変わっています。
実はこれ、市電の架線をかけていた電柱なんです。

今は信号を支える

市バスの起点となるこの場所で、今もしっかり交通安全を支えています。

九条車庫前
↓ (市バス207・71号系統)
七条大宮・京都水族館前

🚩4|車両(下京区)


九条車庫前の停留所から市バスに乗って約10分。
市民の憩いの場である梅小路公園に到着します。

実はここ、今では市電の「聖地」でもあります。

梅小路公園の南東側すぐに、大宮通がJR線を越える「大宮跨線橋」があります。昭和10年に架けられたこの橋には、かつて市電が走っていて「架線柱」が2本、今も残っています。

梅小路公園の芝生広場から望む。何気ない日常風景の中にも市電の痕跡

そして公園の中には、元“京都市電”の車両が今も現役で活躍中です。

「市電ひろば」では、保存車両4両が休憩所として活用。カフェや鉄道グッズショップが設けられ、休日には親子連れなどで賑わいます。

歴代の市電車両が「市電広場」で活躍中

梅小路公園
↓ (徒歩約10分)
京都駅前
↓ (市バス50号系統)
堀川中立売

🚩5|橋台(上京区)


京都駅前のバス停から市バス50系統に乗車。
実はこの系統、元の市電北野線のルートを走ります。

市電に乗った気分で約25分
「堀川中立売」で下車します。

平成21年に川の流れが復元されて、
市民の憩いの場として人気のある堀川にも、市電の足跡が残っています。

石積みのアーチが美しい「堀川第一橋」

明治6(1873)年に架けられた、京都市内で現役最古の石橋アーチ橋「堀川第一橋」(京都市指定有形文化財)の美しい石積に目を奪われますが、目的地はその隣。周囲の石垣とは違う、古い煉瓦積みの壁があります。

これが、市電北野線が堀川を渡るための橋台です。
今ではすっかり植物に覆われて、ひっそり時を刻んでいますが、
綺麗に積まれたレンガ造りに往時が偲ばれます。

市電北野線の橋を支えた橋台

京都は近現代史も魅力的

明治維新の急激な人口減少で存亡の危機に直面した京都が、今の繁栄に至るには、まちの近代化にかけた明治以来の先人たちの並々ならぬ情熱がありました。

京都のまちに生き続ける市電の歴史は、そんな先人たちの息吹をひっそり今に伝えています。

今回は、ちょっと違った視点で京都の歴史探訪をお届けしました。

京都には、このほかにも、数々のモダン建築物など、近現代を象徴する魅力的なスポットがたくさんあります。
そんな京都の近現代史にも、ぜひ注目してください。

京都市では、「まち・ひと・こころが織り成す文化遺産」の魅力を分かりやすくご案内するナビアプリ「京都遺産めぐり」を公開。
今回ご案内した市電の歴史を巡るコースもあります!
ぜひ、ご活用ください。


【見出し写真】
始発前の烏丸車庫(昭和53年9月 加藤幸弘氏撮影・提供)

📝ヒロ(市長公室広報担当)
広報担当2年目の職員。今年の猛暑も峠を越えて(?)朝晩の風に秋の気配がしてまいりました。先日、黄金色に染まる田んぼの脇に「新米」と書かれたのぼりが立っていました。ホッとしますね、いろんな意味で。いつもに増して秋が待ち遠しい、今日この頃です。

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