お金があれば大丈夫?かかしと農家さんと考えた、「食べる」こと
「おはようございまーす!」
体育館から、何やら聞こえてくる、元気な子どもたちの声。
ここは、京都洛西・大原野(おおはらの)にある小学校。
今日は年に一度、2年生の特別授業「かかし作り」の日です。
かかしを作って、クイズに答えて、最後は、ちょっぴりマジメに、「食べる」ことについて、皆で考えてみる。
そんな楽しい学びの一コマを、リポートします!
「かかし」に、次世代への想いを託して
先生は、地域の大先輩たち!
大原野の活性化に取り組む、なんやかんや「大原野」推進協議会・かかしチームの皆さんです。
米作りをはじめ、農業が盛んな大原野。
田んぼや畑で、スズメやカラスを追い払う「かかし」は、身近な存在です。
かかし作りの授業には、子どもたちに、「自然の恵み豊かな、洛西・大原野への愛を育んでほしい」との願いが、こめられています。
平成26年に、大原野の小学校でスタートしたこの授業は、徐々に洛西地域の小学校や幼稚園にも拡大。11年間にわたる活動の中で、1500人以上の子どもたちが授業を受け、400体以上のかかしが、生み出されています。
感性爆発!世界に一つだけのかかしが、出来上がるまで
それでは早速、グループに分かれて、かかしを作っていきましょう!
1時間足らずで、個性あふれる5体のかかしが完成しました!
かかし作りの参加は、今年で4年目となる私。完成した作品を眺めていて、ふと気がつきました。
服にアルファベットの文字が書かれていたかかしが、過去一番多いことに。思いがけず、小学校でグローバル化の波を、感じました…。
授業は2本立て!クイズでさらに学びを深めよう
授業は、かかしを作って終わり、ではありません。
かかしチーム・代表で、米農家でもある小田富久(おだとみひさ)さんが、かかしが守る「お米」について、クイズ形式で教えてくださいます。
一生懸命考えて答える、子どもたちの姿に、見ているこちら側も、うれしくなってしまいます。
クイズの終盤には、小田さんの田んぼで、今年獲れたばかりの、本物のお米も登場しました。
イネから刈り取られたお米が、白米に変わっていく様子を見て、触れて、体験してもらいます。
お米も、お肉も、お魚も。食べることができるのは、「●●」のおかげ?
授業の最後、小田さんは、子どもたちに語りかけます。
「みなさん、お金を出せば、お米を食べることができると思っているかもしれません。だけど、実は、そうとは限りません。ぼくのように、お米をはじめ、食べ物は、必ず『誰か』が作ったり運んだりしてくれているんやね。『いただきます』や『ごちそうさま』を言う時には、そんな『誰か』がいることを、思い出してくれたら、ぼくはとてもうれしいです」
こうして子どもたちの大きな拍手で、授業は幕を下ろしました。
楽しみながら、第一次産業の大切さを感じてもらえたら
かかしチームを、発足時から牽引されている小田さんに、活動への想いを伺いました。
(小田さん)この11年間で40回以上、かかし作りの授業をしていますが、全然飽きません。授業をやるたび、初めて出会う子どもたちから、毎回違った反応がもらえるので、何度やっても新鮮です。出来上がったかかしも、着ている服や帽子、表情も様々で、同じものは一つもない。そんなところも、おもしろいです。何年も前に、かかし作りを一回教えただけなのに、未だに道で会ったら、「かかしのおっちゃんや!」と挨拶をしてくれる子もいます。そんな時、活動を続けてきてよかったなぁとしみじみ感じます。
米農家としては、年々、生産者が減っていく一方で、農業の行く末に危機感を感じています。子どもたちが、少しでも、農業をはじめ、第一次産業と呼ばれる、「食」を支える仕事に興味を持つきっかけになれば、と願いを込めて、毎年、毎回、授業を行っています。
小田さんの想いは、かかしを通じて、子どもたちにも届いているはず。
大人の私にとっても、食べ物が目の前にあることは、決して当たり前のことじゃない…そんなことを改めて気づかせてくれた授業でした。