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京都のまちの「お地蔵さん」。人と未来をつなぐその役割とは?

先日京都のまちなかで、私の前を下校途中の小学生がひとり歩いていました。その子はあるお堂の前で はたと立ち止まると、お地蔵さまにそっと手を合わせ、帰って行ったのでした。

その流れるような所作に感動した私は、頭の中がお地蔵さまでいっぱいに。そんなとき、「京の地蔵盆・夏祭り相談会」が開催されると聞いて伺いました。


地蔵盆とは

「地蔵盆」とは毎年8月下旬を中心に、「町内安全」や「子どもの健やかな成長」を願って各町内で行われる伝統的な民俗行事です。京都市も市独自の「京都をつなぐ無形文化遺産」にも選定し、継承に努めています。

しかし、近頃は子どもの数が減ったり、高齢化が進んだりして開催できない町内が増えている中、コロナ禍が追い打ちをかけます。地蔵盆が中止になったまま再開できない町内が出てしまったのです。

「地蔵盆」での様子

地蔵盆の危機を救え!

そんな地蔵盆の危機を何とかしようと立ち上がったお一人が、㈱熊本玩具代表取締役の熊本盛行さん。京都市内で70年にわたりおもちゃ屋さんを経営されています。

熊本盛行さん

熊本さん|私が子どもの頃は町内に子どもも多く、地蔵盆は違う学年の子どもたちとも一緒に遊べる楽しい行事でした。地域の大人も一生懸命準備をしてくれて、世代を超えた交流も大切な思い出です。

そんな地蔵盆の伝統が、このまま消えてしまってはもったいない!そう思った熊本さんは、2022年にこの「京の地蔵盆・夏祭り相談会」を立ち上げます。

熊本さん|地蔵盆の「見本市」のようなことをしてみようと。まずは地域の皆さんの悩みを知ることから始めました。話を聞いていくと、コロナでの中止で地蔵盆のやり方が継承できない、高齢化で担い手がいないなどの課題が分かりました。

子どもたちの楽しみ「おもちゃ」(熊本玩具さん)

そこで、熊本さんは大学生に手伝ってもらえないかと思い当たります。京都は人口の約1割に当たる15万人の学生が活躍する「大学のまち・学生のまち」です。

大学生とお地蔵さん

熊本さん|大学生に話を聞いてみたら、“大人のための地蔵盆”とか“ナイト地蔵盆”など次々にアイデアが出てくるんです。この若い力を生かさない手はないなと。

そんな中、昨年の相談会に訪れたのが、同志社大学の学生で構成するedunka(エデュンカ・牧弥佑まき みゆ代表)の皆さんでした。

「edunka」の皆さん。(右から2番目)牧さん

牧さん|私たちは“興味関心の種をまく”をテーマに活動する学生団体です。地域コミュニティに興味があり、メンバーのひとりが子ども時代に地蔵盆を経験していたことがきっかけで、「京の地蔵盆・夏祭り相談会」に参加しました。

「edunka」の皆さんは、地域の方々が集まる場があるよと聞いて「上京朝カフェ」に出かけます。そこで市の「まちづくりアドバイザー」の支援もあり、2つの町内の地蔵盆に関わることになります。

牧さん|ひとつは実際の地蔵盆を学ばせていただきたいとの気持ちで参加しました。子どもたち向けのプログラムを担当する中で子どもたちの笑顔や発想豊かに遊ぶ姿に接して自分たちも楽しめました。

続いて、牧さんたちが関わったのが堀川団地の「奈良物町町内会」です。ここでは高齢化などで数年間、地蔵盆が行われておらず、一から再開を目指していきます。

牧さん|地域やNPO法人ANEWAL Galleryの方と協働して準備を進めました。
数珠じゅずまわし、スイカ割り、灯篭づくりなど…子どもたちは夢中になって楽しんでくれました。
そして、子どもたちに地蔵盆のことを伝えるために「紙芝居」を手作りして披露。保護者の方にも喜んでいただきました。
地域の方々に感謝の言葉をいただけたり、子どもたちからも「また遊びたい」との声が聞けて嬉しかったです。

手作りの「かるた」も

人をつなぐ。未来へつなぐ。

学生の皆さんが地域の活動を持続していくには。牧さんの思いは広がります。

牧さん|堀川団地では、これまで地蔵盆を担っていらっしゃったご年配の方々にもっと寄り添えたのではないかとの反省があります。
「edunka」は「自分のやりたいこと」を大切にしています。
こうした地域活動の経験を重ねる中で、次の世代が自発的に地蔵盆に関わっていきたいと思ってもらえたら嬉しいです。

子どもと大人の関り方を軸に、教育に興味がある牧さん。地蔵盆に関わることで地域やまちづくりにも関心が広がったとのことです。

熊本さん|この取組は、京都中小企業同友会中京支部の仲間も一緒に取り組んでくれています。京都で学んだ大学生の多くが、卒業後は京都の外に出てしまうのは残念です。この地蔵盆の取組をきっかけに、地域の住民、企業、学生をつないで、京都の企業に就職してもらいたいと考えています。

地蔵盆が町内だけでなく、大学生の学びにつながり、京都の企業ともつなぐ役割に展開するとは!すごいです、地蔵盆のポテンシャル

鈴を鳴らす「鈴緒(すずお)」(麻専門店「麻小路」さん)

「第3回地蔵盆・夏祭り体験イベント」開催!

地域企業と学生ボランティアの皆さんを中心に企画・運営。地蔵盆の体験などができる「第3回地蔵盆・夏休み体験イベント」が以下のとおり開催されます。ぜひ、ご来場ください!

(日時)令和6年8月31日(土)・9月1日(日)10時~17時
(場所)ゼスト御池地下街[寺町広場・御幸町広場]
★最新のおもちゃが大集合する「アソボーフェスタ」、納税協会による「税金クイズ」も同時開催★

また、中京区役所では京都中小企業家同友会中京支部の皆さんと共に、本相談会に合わせて、大学生と京都企業をつなぐイベントを開催。
大学生の皆さん、ぜひご参加ください!

地蔵盆体験イベント(第3回京の地蔵盆・夏祭り体験イベントへの運営)
令和6年8月31日(土)午後1時~午後5時頃/ゼスト御池 地下街
②地域企業の魅力発見ワークショップ
令和6年9月4日(水)午後1時~午後5時頃/中京区役所 4階

まちづくりのモデルに

子どもの頃の大切な思い出とともに、地域の方々の心にしっかりと生きている「地蔵盆」
そんな地蔵盆の価値を大切に、次世代に残そうと懸命に尽くされる熊本さんの熱意。
そして、牧さんをはじめとする大学生の若い力と行動力が結びついた地蔵盆の再生は、高齢化が進む地域の活性化につながる、ひとつのモデルケースと言えると思います。
たくさん人が住んでいる都会においても孤立や孤独が進む今、「地蔵盆」は未来に向けて、変わらぬ価値と大きな可能性があることを強く感じました。

子どもの名前を記して奉納する「提灯」(髙橋提燈さん)

★「edunka」の皆さんの取組はこちらでも紹介

📝ヒロ(市長公室広報担当)
広報担当2年目の職員。京都市京セラ美術館で開催中の「村上隆もののけ京都」展に行きました。た、楽しすぎる…そこには魅惑のパラレル京都が!時間を忘れてふわふわしてました。おすすめの作品は、えーっと…全部!子どもたちこそ見て欲しい。まだの方はぜひ1度、もう観た方はもう1回!