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人とのつながりから生まれる新たな表現

京都市では、文化芸術をみんなで支える寄付ポータルサイト「Kyoto Art Donation」や、文化芸術活動を応援する補助金「Arts Aid KYOTO」で、アーティストなどによる様々な創作活動等を支援しています。 

今回、この「Arts Aid KYOTO(事業認定型)」の支援を受けて創作に取り組む現代美術家・三浦光雅みうらこうがさんのアトリエを訪問。

三浦さんの新たな表現への挑戦と、京都で創作活動を行う魅力などを伺いました。

三浦光雅さん
1997年山口県出身。京都芸術大学 大学院 芸術専攻 美術工芸領域 修了。
「偶然性・無作為」を主なテーマに、構図や配色を乱数により決めて描く平面作品を制作。機械的でありながら偶発性との出会いを肯定しながら作品を制作し続けている。
「WATOWA ART AWARD 2021」 小松隆宏賞、「シェル美術賞 2020」 入選、「2020 年度京都芸術大学 大学院修了展」 大学院賞などを受賞。
https://www.instagram.com/koga_miura/



自由にできない自分の表現

anonymous studio KYOTO

京都市東山区、清水焼発祥の地でもある五条坂に三浦さんのアトリエがあります。

anonymous studio KYOTO

ここは、anonymous art projectが若手芸術家を支援するため運営する「anonymous studio KYOTO」という展示ギャラリー兼スタジオ。
2024年にオープンしました。

五条通に面した正面がギャラリーで、その奥にある三浦さんの制作スペースには、画材や制作中の作品が、所狭しと並んでいます。

ー清水寺に向かう道で、人通りも多い場所ですね。

三浦さん:海外の方も多いですね。9月にここで展示をした時は、1時間に10名ほど来られたこともあります。「きれいな作品だね」って言ってもらえたりして、英語は話せないんですけど、作品を通じてコミュニケーションが取れるのは面白かったです。

制作者の作為を入れない作品

ー乱数を使って作品を制作されると伺いました。

三浦さん:乱数生成アプリを使用して、49色をランダムに配色しています。作品によっては10色だけ選んでパターンを作ることもあります。

制作中は指示書を見ながら、無心で線を引くだけです。
色や描き方で作品の印象は大きく変わりますし、描き終わるとこの線は無い方が良くない?とか気になることもありますね。
でも、そういった違和感やイレギュラーなことも許容して、楽しむようになりました。

制作に使用する絵具。底の番号を乱数表に対応させる

デジタル技術で描くこともできるかも知れませんが、1点ものの追求というか自分で実感できるものにこだわって手で線を引いています。
この繰り返しをすることで、嫌なこととか嬉しいこととか、自分のことが分かるようになってきました。

ーこの制作手法はどのように生まれたんですか?

三浦さん: 私、怠惰なんですよ。自由にしていいよって言われたら手が動かなくなるんです。制作の前にルールを決めておくことで、制作中に頭を使わずに済むのは、自分に向いている方法だと思います。

準備に手間をかけるか、制作中に考えるかの選択では、私は前者を好んでいます。最初にスイッチを入れるのが大変ですが、一度始めるとずっと楽しく制作を続けられます。

ー武道をされていたとのことですが、同じ型をやり続けるのは、その経験も生きていそうですね?

三浦さん:武道では型をひたすら再現する修行や練習が中心だったので、そういった経験が制作スタイルに合っているのかも知れませんね。

アーティストにとっての京都

京都で制作する魅力

ー三浦さんにとって京都の魅力は?

三浦さん:京都は学生も多いですし、現代美術に限らず、デザインや工芸など、作り手が多くいますし、作り手に理解のあるまちだと感じます。

京都は東京や大阪ほどの大都会ではないですが、世界的に著名な作家が来られる機会もあります。でも、それでこのまちが持つ時間の流れが大きく変わることはありません。

新しい文化を取り入れつつ、のんびりと過ごす時間もある。そんなバランスの取れたまちだと思います。家賃がちょっと高いのは困りますけどね(笑) 

Arts Aid KYOTO(事業認定型)の支援を受けて

三浦さん:6年間、同じ制作を続けてきて、飽きることは無いんですが、作業的になってきたかなと思うこともあります。
今回の事業認定を受けて、表現の幅を広げる事に挑戦したり、じっくりと考える環境が得られたのは大きいです。

ここの大家さんが窯元さんを紹介してくださったので陶芸にも挑戦したいと思っています。
今の自分が持っている表現方法以外のことにもチャレンジできる環境があるのは嬉しいですね。まっすぐ線を引こうとしてもまっすぐ引けないような立体作品にも挑戦したいと思っています。

ーArts Aid KYOTOや寄付サイト「Kyoto Art Donation」の良さって何ですか?

三浦さん:温かいですよね。連帯感がすごくある。京都の良さかも知れませんが、つながりがあって気に留めてくれる人が増えていく感じです。

助成金って、個人で申請して後は孤独に頑張るって感じですが、この制度では出資者、アーティスト、京都市との繋がりを強く感じられて心強いです。

この前のKyoto Art Donation「報告交流会」でも、学芸員の方とか、他のジャンルの作家さんだったり、本でしか見たことないような専門家がおられたり(笑)
そういった方々と出会えて、次のチャンスのきっかけにもなるのはありがたいです。

さらなる挑戦を

ー最後に、これから挑戦したいことを教えてください。

三浦さん:これからも京都で制作を続けていけたらと考えています。この機会にまだまだ挑戦をしていきます。

今年の9月に続き、来年にもここのギャラリーで展覧会を行います。これまで京都で展示する機会が無かったのですが、来年1月と3月に京都で個展を開催する予定です。また群馬県で開催の青年ビエンナーレにも挑戦します。

報告交流会の様子

取材を終えて

最後に写真を撮らせてくださいとお願いしたら、
「写真苦手なんですよ」と、とっさに作品を手にした三浦さん(かたい表情の見出し写真)。
「作為を入れない」作品に、自分の分身を見出している。
そんな姿を垣間見た気がしました。

立体作品など、これからの展開が楽しみです。

文化芸術を支える輪を、もっともっと

京都市では、12月を「京都文化寄付月間」とし、文化芸術をみんなで支える輪をもっと広げる取り組みを進めています。

AIの進化など急速に社会が変化して、
「人間らしさ」が問われる今、
文化芸術の果たす役割はますます高まっています。

Kyoto Art Donationでは、寄付や参加など、それぞれの希望に応じた形で文化芸術に取り組む方々を応援できます。

私たちの暮らしと未来を豊かにする文化芸術を、みんなで支えていきましょう。

📝ヒロ(市長公室広報担当)
広報担当2年目の職員。2024年も本日が仕事納めです。京都市公式noteを応援してくださいました皆様、ありがとうございます!来年も、さらに深掘りした記事をお届けできるよう、京都のまちを走り回ります。引き続き、よろしくお願いします。よいお年を!

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