モヤモヤを届けたい!若者の声をまちづくりにつなげる仕組みとは?
子どもや若者たちにも、日々の“モヤモヤ”がいっぱいあります。
学校のこと、家族とのこと、地域や社会のこと…
「こうなったら良いな」と思っても伝える先が無い。
子どもだから、未熟だからと、
口を閉ざしてしまうことが多いかもしれません。
そんな子どもや若者の声が、
地域の大人や行政に、届く仕組みを考えよう!と、
挑戦する若者たちを取材しました。
きっかけは、市の計画づくり
今回の主役は「ユースカウンシル京都」の皆さん。
京都市中京区にある「中央青少年活動センター」を拠点に、大学生から社会人(概ね20~30歳)の若者が活動しています。
地域の活性化や、中高生の居場所づくり、選挙の啓発、史跡巡りのフィールドワークなど、自分たちの「やりたいこと」「解決したいこと」を形にしてきました。
これまで地元新聞への掲載や「輝く学生応援アワード」を受賞するなど、その活動は高く評価されています。
「若者の声反映プロジェクト~届け‼モヤモヤくん~」
現在京都市では、0歳から概ね30歳未満を対象に、子ども・子育て・若者施策の基本方針となる「京都市はぐくみプラン(京都市子ども・若者総合計画)」(令和7年度から5年間)の見直し作業を進めています。
自分たちのための計画に、当事者の声を反映しよう!
そして、若者の声を行政に届ける仕組みを作ろう!
その思いから始まったのが「若者の声反映プロジェクト~届け‼モヤモヤくん~」です。
“モヤモヤ”を集める
メンバーは、市内7箇所の「青少年活動センター」を拠点にアンケート調査を実施。
13歳~30歳ぐらいの若者の日々の暮らしで抱える困りごとや願い「モヤモヤ」を集めはじめます。
さらに、支援担当者へのインタビュー、オンラインやワークショップなど、いろんな手法を駆使。
その回答総数はなんと、783件!!
少しでも多くの声を…との強い思いを感じます。
テーマの設定から議論を積み重ねて約8箇月。
集めに集めた声は、市の担当者も「まさかここまで…」と驚く
36ページにも及ぶアツい報告書になりました。
中を開くと、本当にたくさんの「声」が載っています。
公園のこと、人との交流のこと、学校のこと、進路のこと…
個人的なことから地域やまちづくりまで、さまざま。
若者の悩みや思い、考えていることなどが、ありありと伝わってきます。
イロイロあって戸惑うことも
一歩一歩前に進む
手探りで始めた調査。
若者の率直な意見ってどうやって拾うの?
どんな設問にする?
テーマは?など…
ゴールの姿がなかなか見えなくて、
最初は本当にできるのかと悩む日々。
自分たちでひとつずつプロセスを検討しながら進むしかありませんでした。
“本音”を引き出す難しさ
自分の気持ちってうまく言葉にできないこともありますよね。
思っていることを聞き出すのは難しいものです。
そんな事を実感しながらも
「丁寧に、聴き方を工夫することで、少しずつ中高生や大学生も反応してくれるようになりました」
とても時間をかけて若者に向き合い、
丁寧に寄り添ってきたことが分かります。
一方で、多くの意見が集まったけど、
必ずしも同じ方向ではないことへの苦労も。
多様性は必要だけど、それゆえの大変さも痛感したとのことです。
市長に直接声を届ける
こうして苦労の末にまとめた「声」は直接、
「市民対話会議」という形で、松井孝治京都市長に届けられました。
ちょっと緊張感が漂いながら「会議」はスタート。
メンバーが、声を集めてみんなで考えた、若者の居場所づくりや、意見をまちづくりに反映する仕組みなどを提案しました。
安心できる居場所を
人と人が会えなくなったコロナ禍。
多くの人々が孤立や孤独感を抱えることになりました。
そんな経験から、
「目的」が無くても自由に集まれる「場」や、
助けて欲しい時に「助けて」と言える人の存在の大切さ
について意見が交わされました。
私が印象的だったのは、SNSなどを使いこなす若者たちが、「リアル」なつながりを求めていたこと。
目的が無くても行ける場所、「何もしなくていい」という安心感が持てる居場所が身近に欲しいという意見が多くありました。
声を届けられる仕組みを
続いて、若者の意見をどのように行政に反映するのか。
その仕組みとして、意見の形成から対話→検討→フィードバックが循環するモデルが示されました。
メンバーが若者からモヤモヤを聞きだした経験が、しっかりと反映されています。
そこで大切なのは「納得感」。
以前、市に取組の提案をした時に聞き入れてもらえず、その理由も教えてもらえなかった経験から、不信感を持ったというメンバーも…
行政には、「できる」か「できないか」ではなく、
「どうしたらできるか」を一緒になって考える姿勢や、
未熟な意見でも広い心で受け止めて欲しいなどの思いも伝えられました。
誰でも頭ごなしに「ダメっ」って言われたら、やる気を無くしますよね。
納得です。
今回のアンケート調査の中でも、「それって聴いて、何になるの?」との反応によく直面したそうです。
でも、市に直接意見を届けるという「期待感」でそれならば…と答えてくれた若者も多かったと言います。
きちんと声が生きるという、期待感と信頼感の大切さを気付かされます。
当事者になることで好循環を
若者も地域や社会に関わりたいと思っている。
でも、その考えを誰に伝えたら良いのか、
言っても聞いてもらえるのかと不安にも思っているとも。
そんな思いを取り逃しているならば、もったいないことですよね。
身近なところに信頼して声を届けられる場所がある。
そのことが「伝えたい」という気持ちにつながる。
さらに、声を自らの手で実現できることが、自己肯定感や充足感につながっていく。
地域活動の担い手の減少は、多くの地域で直面している課題です。
若者が地域で活躍するために、何が必要か。
その答えにつながる提案だと感じました。
「つなぐ」役割の大切さ
松井市長からは「結節点」をキーワードに、対面で話ができる場の重要性や公共の役割についての考えが伝えられました。
「あらゆる世代で、声を届ける仕組み、相談できる社会をどう作っていくのかを考えることはとても重要です。」
地域には意見をつなぐ様々な「パイプ」があり、それらをつなぐ「結節点」の役割を担ってくださる人がいる。
しかし今、その「結節点」が一部で目詰まりを起こしています。
地域や社会で“おせっかい”をする「公共の役割」を増やしていくこと。
そして、すべての人に「居場所」があり、それが「出番」となる社会を作っていくことが大切です。
「これからも若者と地域や行政を『つなぐ』役割を担ってほしい」
時間と共に緊張感もほぐれ、真剣に、時に笑顔あふれる和やかな雰囲気に包まれながら、若者たちとの「市民対話会議」は幕を下ろしました。
ここが新たなスタート地点
ー令和元年にユースカウンシル京都が立ち上がって、ようやく政策提言ができるまでになりました。
そう感慨深く話すメンバーからは、次世代への期待も。
「私が中高生のときに、この仕組みがあったら良かったな(笑)。次の世代がこの仕組みを受け継いでくれたら嬉しい。」
今回の取組を通じて、様々な声があること、声なき声を拾い、行政に届けることの大切さを実感したと語ります。
でも、ここからが新たなスタート。
今回の提案が一過性のものではなく、実際に機能していくことが大切と、メンバーは語ります。
「これからも新しいメンバーが加わり、今ない考えや思いを取り込んでいきたい。これからも意見を聴くという姿勢を大切に、いろいろな人と関わりながら、成長していきたい」
自分が社会の役に立っているという実感や、「胸を張って言えることができた」と話すメンバーの表情は、大きな仕事をやり遂げた充実感と安堵感、そして未来への希望で輝いていました。
取材を終えて
子どもや若者の声を集めて、議論して、形にして伝える。
今回の取組は、様々な意見がある多様性の時代に、地域や社会にとってますます大切になる機能だと強く感じました。
そんな仕組みを作ろうと、大きな一歩を踏み出したユースカウンシル京都の皆さんは、不登校を経験したり、生き方に悩んだり…「等身大」の若者でした。
そんなメンバーだからこそ、若者や子どもたちにしっかりと寄り添い、その声を届けることができたのかも知れない。
そんなことを思いつつ、声なき声を懸命に届けようとするメンバーの姿に、私も強く心を動かされました。
「ユースカウンシル京都」の皆さんのこれからにも注目ですね。
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