「令和の米騒動」勃発!その時、米作りの現場では?
ぴかぴかと輝く米粒。ふわりと広がる甘い香り…。
そうです、新米の季節です!
去る8月。夏の終わりに、日本各地で巻き起こった「令和の米騒動」。
様々な理由が重なり、店頭からお米が消えてしまいました。
私もお店を東へ西へ。どこに行ってもお米の棚がガラ空きでした…。
10月に入り、ようやく新米の流通が安定してきて、品薄が解消されてきたようです。
この間、米作りの現場では、何が起こっていたのでしょう!?
米作りが盛んな、京都洛西(らくさい)・大原野(おおはらの)から、リポートします!
しっかり巻き込まれた「米騒動」
お話を伺ったのは、お米をはじめ、様々な品目の農作物を育てて農業を営む、むかい農園の向井 喜明(むかい よしあき)さん。
元々、会社勤めをされていましたが早期退職。家業の農業を継ぎ、今年で、12年目を迎えられます。
―米騒動の最中、向井さんのところにも、お米の注文が殺到したのでしょうか?
(向井さん)「殺到」というほどではありませんでしたが、「お米ありませんか?」という問合せは、増えましたね。中には、「明日食べる分がない」といった切実なものも…。実は、米騒動が起きたのは、前年に収穫したお米の在庫がなくなるタイミング。米が足りないのは、周囲の農家も同じでした。それでも、注文に応えようと、なんとか仲間同士で融通しあって対応しました。振り返ると、てんやわんやでしたね(笑)。
―お米の品薄は落ち着きましたが、お米の値段は以前より上がったままです。
(向井さん)たしかに、お米の需要が高まって高値が付くので、農家にとっては、ありがたい面もあります。でも、僕自身の場合、今までお世話になってきた取引先の方々に対して、そう簡単に値段は上げられませんね。目先の利益より、僕が作る米、大原野の米を評価していただき、注文をくださる方々との、末長いお付き合いを大事にしたいんです。買う側も売る側も、両方が納得できる値段で、折り合いをつけていきたいですね。
気温も経費も上昇する中で。米作りに奮闘中。
米騒動が起こった原因のひとつが、猛暑による、収穫量の減少です。
高温が続くと米が白く濁ったり、実の付き方が減ったりするなどの、深刻な影響が出てしまうのです。
―今年のお米の出来はいかがでしょうか?
(向井さん)収穫量は、まずまず。平年並みですね。ただ、高温の影響で、精米してみたら白く濁ってしまった米が、よく混ざっています。味に影響はないのですが、見た目が悪いため、品質としては下がってしまいますね。
―ほかにも、米作りで苦労されていることはありますか。
(向井さん)米に限ったことではありませんが、昨今の物価高は困りものです。苗や肥料など、農業に必要なものがどれも値上がりしています。
―気温だけでなく、色々なものが上がっているんですね…。そうした中で、工夫されている点はありますか。
(向井さん)例えば、手間はかかるけど苗を自分で育てています。「苗の出来によって、作物の出来の半分が決まる」と言われるほど、苗は農業の中で大切なものです。しっかり育った苗を買って植えたら楽ですが、コストが高くなります。でも、小さい苗を仕入れて育てると、コストは削減できるし、「米を作っている」という実感も持てますね。
美味しいものづくりを、コツコツと。
最後に向井さんへ、これからの目標について伺いました。
(向井さん)コツコツと積み重ねてきたことが評価いただけたのか、ありがたいことに、たくさんの注文をいただけるようになりました。ただ、基本ひとりで作業しているので、労力に限りがあり、生産が追いついていない状況です。当初イメージしていた経営の目標には届いておらず、まだまだ試行錯誤中ですね。大原野は、まちに近くて新鮮なものをすぐにお届けできるのが、最大のメリットです。これからも良いものを作り、販路を確保して、頑張っていきたいです。
最初から最後まで、淡々とお話してくださった向井さん。
でも、農業への熱い思いはひしひしと伝わってきました 。
「美味しいものを作って、求めてくれる人の元へ届けるだけ。米騒動だろうと何だろうと、やることは変わりません」。そう語る向井さんは、今日も自然と向き合いながら農場で汗を流します。
京都有数のコメどころを担当する洛西支所では、「令和の米騒動」に直面する中、お米のことや地域の農業を改めて、考えていただく機会になれば。その思いで、お米のことを様々な角度からお伝えしてきました。
私たちが毎日食べているお米の裏には、農家の皆さんの日々の苦労と努力がありました。これからも、感謝の気持ちを込めて「いただきます」をしたいと思います。
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