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みんなの当たり前に「なんで?」と言ってみる。

京都市では、未来を担う中高生と、新進気鋭の起業家の皆さんが仕事について一緒に考える「京都市ユース・アントレプレナーシッププログラム」を創設。
そのキックオフイベントとして開催した「アントレってなんソレ?」には、中高生を中心に約70名が参加しました。

起業家から教えてもらった自分らしく生きるヒントをお伝えします。

前回に続き、今回は株式会社スタジオプレーリーの坂本茜音さんのお話をご紹介します。

ゲスト:坂木茜音さん(株式会社スタジオプレーリー共同代表)
山口県出身。大学時代、伝統工芸・建築を京都で学ぶ。バックパックを経験。東京を拠点に個人事業主としてデザイン業務・美術館運営やコミュニティ形成に携わった後、㈱ロフトワークでクリエイティブディレクターを務める。シェアハウスの管理人・アーティストの肩書も持つ。
進行:中馬一登さん(株式会社一代表取締役)

友達のためにつくったものがきっかけで、自然と会社を立ち上げる流れに

デジタル名刺「プレーリーカード」の生みの親として、様々なメディアにも取り上げられている坂木さん。2023年には、インクルージョン・ジャパン株式会社と株式会社MIXIからの資金調達を発表しました。

— 坂木さんは、僕が代表をしていた会社にインターンに来てくれてたんですよ。美大出身でアートに振り切っていて、めっちゃ自由人で、皆から愛されていました。こんなビッグな経営者になって帰ってきてくれるなんて!まずは自己紹介をお願いします。

(坂木さん)ふふ、なんか変な感じですね。今日はよろしくお願いします。出身は、山口県のめっちゃ田舎です。修学旅行で来た京都を好きになりすぎて、がんばって山口を飛び出して京都の大学に入りました。

プレーリーカードを最初につくったのは、東京で同じシェアハウスに住むアーティストの子が、海外に行く時だったんです。彼は紙の名刺を作ってたんですけど、作品の写真の上に名前とかQRとかを乗せてしまうのが、めっちゃもったいないと思って。

— 起業するぞって意気込みがあったわけじゃなくて、たまたま友達のためにつくったものがきっかけで、自然と会社を立ち上げる流れになったんよね

(坂木さん)そうなんです。名刺って、世界で年間100億枚消費されてるらしくて。その7〜8割が日本だと言われています。もらった名刺って実は使い道がないですよね。しかも、名刺から得られる情報量ってけっこう少なくないですか?もっと趣味とか、好きなものとかがわかれば仲良くなりやすいし、メールよりもSNSでつながりたい人も多いはずなのに。

このカードを広めていったら、人と人との出会いが変わるんじゃないかと思いました。「新しい出会いの文化を創造し、コミュニケーションを豊かにする」というのは、会社のミッションでもあるし、私個人のミッションでもあります。

— かっこいい。坂木さんは、インターンに来てた時は、折り紙にハマってたんですよ。あのプロジェクトの展開にも驚いたな。

(坂木さん)世界中の人に鶴を折ってもらうプロジェクトをやりましたね。ORIORIっていう。住んでたシェアハウスに遊びに来たイタリア人の子たちに、鶴の折り方を教えてって言われて。

一緒に折ってメッセージを書いて交換したのが、なんかすごく楽しかったんですよ。ちょうど大学で伝統工芸を勉強してて、日本の文化って何なんだろうって考えていた時でした。

おもしろいから、とりあえず折り鶴を皆と折ってみようと思って、あの頃はどこへ行くにも折り紙を持ってましたね。

そしたら知り合いがSNSで広めてくれたり、小学校の授業に呼ばれるようになったりして。でも私、お金を稼ぐのがものすごく下手で、ずっと手弁当で動いてました。

— 当時、ZOZOの前澤さんが100人に100万円配る企画があって、すごい話題になってて。そしたら坂木さんが「私当たりました〜!」って。

(坂木さん)470万人くらい応募してたらしいですね。
そのお金で9ヶ月間、バックパックを背負って世界をまわりました。

2020年までに1万人と折りますっていう目標を掲げてたんですけど、新型コロナウイルスが流行して、人に会えなくなっちゃって。
今、実家に3000羽くらいあるかな。この活動がいったい何になるのかはわからなかったけど、やってよかったと思います。

やりたい、変えたいと思うことが見つかったら、ちょっとでも行動してみる

— そんな坂木さんの生い立ちを教えてください。

(坂木さん)お母さんが美容師で、小学生の時は美容室の電話に出るのが好きでした。バレないように、お母さんのふりをして喋るのが楽しくて。大人と喋るのがおもしろかったのかな。

— やっぱり小さい時からチャレンジャーやね。

(坂木さん)6年生の運動会では、私の学校では初の女子団長になりました。この経験が、一つの成功体験でしたね。

最近は変わってるかもしれないけど、当時は団長は男子がやるのが当たり前って皆が思っていて。でも私、やってみたくて。
先生に聞いたら「女子でもできるよ、立候補したらいいじゃん」って言われたんです。

「なんで?」って思ったことは、言ってみるもんだなって感じた経験でした。

— その頃から大人を頼るのがうまかったんや。

(坂木さん)高校の時は、バンドやりたいけど軽音部がなくて、学校の先生には「そんなチャラチャラした部活はだめ」って言われて。近所のおっちゃんがドラムを貸してくれて、学校の外で活動してました。

アントレプレナーシップってなんだろうって考えた時に、私にとっては、このあたりの感覚なんだと思います。
不満に感じることがあったら、どうやったら解決できるかを考える。やりたい、変えたいって思うことが見つかったら、ちょっと行動してみる。

人に言うことも大事ですよね。宣言するとサボれないし、味方になってくれる人が見つかるかもしれないし。

迷ったら難しい方を選ぶ。後悔してないって思えるまでやる。

— 気持ちを保つために、心掛けていることはありますか?

(坂木さん)自分をちゃんと褒めることが必要だと思う。
小さいことでいいから、自分が挑戦したことに対して「よくやった!」「できた!」って。その実感を積み重ねることで、自分に暗示をかけるみたいなイメージです。

でも、10代の頃と今はやっぱりなんか違って……
大人になるとめちゃめちゃへこむことが増えました。周りを見て、あの人たちはできてるのに私はできないっていう気持ちになることが多くて。

そういう時に、学生の頃に頑張ったこととかが、気持ちを支えてくれるんですよね。自分なりにやれることをやってきたよなって、ちょっと自分を信じることができる。

— 今の時代はSNSがあるから、世界中の同世代の活躍が見えてしまうよね。自分よりすごい人が嫌でも目に入ってくるから、自信を保つのが難しくなってると思う。

(坂木さん)私、ネガティブになった時のルーティーンがあるんですよ。一つめは、神社やお寺に行くこと。静かな場所で、一人で落ち着いて気持ちを整理します。

もう一つは、人に話すこと。これは2パターンあって、ただただ話を聞いてほしい場合と、意見がほしい場合で、それぞれ違う相手に話します。

そういうルーティーンがあるといいですよね。めっちゃ集中したい時は音楽を爆音でかける、とかも。

ーこれからの人生には絶対しんどい時もあるから、持っているといいよね。最後に中高生の皆にメッセージをお願いします!

(坂木さん)私が大事にしている2つのことを紹介します。
まずは、迷ったら難しい方を選ぶこと。
楽しそうな方って、だいたいちょっと難しいので。

あと、後悔してないって思える状況ができるまでやり続けること。
何かを選ぶ時に、後悔しないようにってよく言うじゃないですか。
でも私は、その時点では、どっちを選んでも後悔すると思うんです。

その後にこっちを選んでよかったと思えるまで努力することで、後悔しないという結果をつくれる。そう考えてます。ちょっとでも参考にしてもらえたら嬉しいです。

— 坂木さん、ありがとうございました!

参加者によるワークショップの様子

「京都市ユース・アントレプレナーシッププログラム」の運営費は、起業家教育の取組に御賛同いただいた方々の御寄付で実施しています。

ご協力をいただいた企業の皆さまに、改めて感謝を申し上げます。

松村さん、坂木さん、参加者で記念撮影

📝産業観光局産業イノベーション推進室

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