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市民・観光客を守るっ!「帰宅困難者対策訓練」の最前線をレポート!

地震、台風、集中豪雨など、過去に例の無いような自然災害が増えています。
もしその時、電車が止まり、大勢の人々が行き場を失ってしまったら…。
日本を代表する観光地・京都で、帰宅困難者が発生した場合に備えた訓練の現場をリポートします。


約2万8千人が帰れなくなる

京都駅は東海道新幹線(JR東海)、JR西日本、近鉄、市営地下鉄が乗り入れ、1日平均28万人乗車人数がある市内最大のターミナル駅です。
 
もし大雪や地震などの災害で公共交通機関が停止した場合、京都駅ではピーク時、約2万8千人もの帰宅困難者が発生すると推定されています。

近鉄京都駅前から訓練スタート

2024年12月、京都駅。
「不測の事態で近鉄の運行が停止したことをきっかけに帰宅困難者が発生した」という想定で、鉄道事業者や周辺ホテル等の事業者による相互連携・支援を目的に、京都市や鉄道会社、駅周辺の事業者ら100名超が参加する大規模な訓練が実施されました。

近鉄京都駅の改札前で滞留する帰宅困難者役の人々

まずは近鉄による帰宅困難者の安否確認からスタート。
そして、近鉄からJR東海・JR西日本に対して『緊急避難広場』の開設を要請。また、京都市交通局に対して誘導の応援人員の派遣を要請しました。
 
次に、近鉄による『緊急避難広場』の開設作業に進みます。
 
緊急避難広場とは、帰宅困難者の安全を確保する一時的な避難場所。京都市では寺社や事業者と連携し、市内に約50箇所確保しています。

各者の連絡は『LINE WORKS』を活用

『LINE WORKS』でのやり取り

情報伝達の手段はビジネスチャットツール『LINE WORKS』。
「近鉄で何名の帰宅困難者が発生しているか」「各者の『緊急避難広場』で何名ほど受入可能か」などをリアルタイムでやり取り。
会場は緊迫した雰囲気に包まれます。
この間、駅職員からも細やかに現状のアナウンスがあるのですが、我々取材班や帰宅困難者役としては非常に長い時間に感じます。

『緊急避難広場』での受入れ

『緊急避難広場』への移動

発災から約20分後、駅構内に近鉄による最初の『緊急避難広場』が開設され、駅職員が帰宅困難者役を誘導します。
 
『緊急避難広場』の受付では、帰宅困難者役の住所・氏名の確認や、「徒歩での帰宅ができるか」「体調は大丈夫か」など、駅職員が一人ひとりの状況を丁寧に確認していきます。
また、冬なのでカイロの配布や、ブルーシートを使った簡易的な避難スペースも設けられました。

『緊急避難広場』の様子

その間も、連携各社の活動は続きます。
JR東海・JR西日本も順次『緊急避難広場』を開設。「50名受け入れ可能」「準備整いました」などの情報を『LINE WORKS』で共有。
 
近鉄の『緊急避難広場』だけではスタッフの数も含めキャパシティに限界があるという想定で、周辺に開設された他の『緊急避難広場』にも分散して避難します。

JR東海が開設した『緊急避難広場』に移動する帰宅困難者役の人々

『一時滞在施設』への避難

京都市では、ホテル・旅館等と連携し、『緊急避難広場』で滞留している方が休憩・仮眠できるよう『一時滞在施設』を市内に約120箇所確保しています。
 
今回の訓練でも『緊急避難広場』での受け入れと平行して、京都駅周辺のホテル等に『一時滞在施設』としての受入体制を整えていきます。

帰宅困難者役に今後の流れの説明を行う駅職員

ただ、帰宅困難者役としては、「いつまで待たされるんだろう」と不安が募っていきます。
今回のわずかな訓練の中でも、実際に寒さで体力が奪われていくことを痛感。「本当に被災したらもっと長時間待機することになるのでは」といった不安もよぎります。

『一時滞在施設』への移動

『緊急避難広場』への移動から約25分後、各ホテルから受け入れ準備が整ったとの連絡が入りました。
今回の訓練では、帰宅困難者役が駅職員の誘導のもと、それぞれの『緊急避難広場』から5つの『一時滞在施設』に移動を開始。

発災から約70分後には帰宅困難者役の全員が『一時滞在施設』に到着し、今回の訓練は終了しました。

訓練を振り返って

訓練終了後の振り返りでは、帰宅困難者が感じる『情報飢餓』が話題となりました。
『情報飢餓』とは、災害時に「今何が起きているのか」「いつ頃状況が改善するのか」といった情報が十分に得られない不安のことです。
 
今回の訓練中も、駅職員の皆さんは一生懸命に情報伝達しようと努力されていましたが、受取手側の求める情報をタイムリーに届けることの難しさを改めて体感する結果となりました。
 
このほか「鉄道会社同士で電話がつながらない」などのトラブルも。
緊急事態下では、想定外のことが頻発し、鉄道会社にも帰宅困難者側にも自ずと混乱が生じてしまいます。
また、実際には今回の訓練の何十倍もの帰宅困難者が発生、海外の方も多数利用される駅なので、情報伝達をはじめ更に困難な状況が想定されます。
 
平時からこうした訓練を重ねることで、課題や問題点をあらかじめ洗い出し対策を立てることの大切さを、身をもって体験しました。

市民の皆様に観光の恩恵を

京都市では、今回の帰宅困難者対策訓練をはじめ、市民・観光客双方の安心・安全に関わる経費の一部に、観光客の皆さまの納めていただいた『宿泊税』を活用しています。
 
京都市ではこれからも、市民生活と調和した「持続可能な観光」に向けて様々な取組を進めていきます。
皆さまのご理解とご協力をお願いします。


京都市では、市民の皆様の暮らしと観光をつなぐポータルサイト「LINK! LINK! LINK!(リンク・リンク・リンク)」を開設しました。

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📝産業観光局観光MICE推進室

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