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農業を未来につなぐスムージー。お芋に込めた情熱とは。

私たちの日々の暮らしに欠かせないお米や野菜
今年は“令和の米騒動”と言われる事態も。

日本全体で、農業に従事される方が大幅に減少。
近い将来に深刻な担い手不足が心配されています。

・ 基幹的農業従事者数
 約240万⼈(2000年)から約116万⼈(2023年)に半減
・20年後の担い手の中⼼となる年齢層は、全体の約2割(24万⼈程度)

(出典)令和5年度⾷料・農業・農村⽩書概要

一方、毎年10月は「食品ロス削減月間」
日本で本来食べられるのに捨てられる食品「食品ロス」の量は年間472万t(令和4年度推計値)。
これは日本人1人当たり、おにぎり約1個分のご飯を毎日捨てているのと近い量になるのだそうです。もったいないですね。

そんな中、こうした「食の問題」に向き合い、農業と若者をつなげようと奔走する大学生の取組を取材しました。


規格外も美味しい商品に

お話を伺ったのは、
株式会社ABCサステナテーブル(以下「ABCサステナテーブル」)でアンバサダーを務める酒木陽妃さんです。

酒木陽妃さん

同社は、ABC Cooking Studioと共に、
フードロスなどの「食の問題」にもっと向き合おうと、
若い世代と一緒にこれからの「食の価値」を考える。
そんな環境配慮型・未来志向のクッキングクラスを展開しています。

そこでは、サステナブルな食文化の提唱を目的に、
大学生など若い世代のインターンの皆さんが多数活躍されています。

酒木さん|フードロス対策が進んでいるカナダに留学し、食への関心を持ちました。その後、オランダの大学に留学。植物由来の食品を中心とする「プラントベース」を学びました。

帰国後、酒木さんは2024年4月に開設されたばかりのABCサステナテーブルKYOTOを拠点に、京都近郊で実際に農業を体験しながら、農家の思いを伝えようと活動しておられます。

酒木さん|農家さんが一生懸命育てた野菜でも、曲がっていたりして出荷できない“規格外”が発生します。そうした野菜を私たちは“ナチュラルべジ”として美味しく食べられる商品づくりに取り組んでいます。

京都のサスティナブルな食の価値を広く発信するため、
京都市と連携して何かできないか…
そう考えた酒木さんは市のSDGs推進担当を訪れます。

色々と対話を重ねる中で紹介されたのが「KYOTO Agri-Business Café」でした。


KYOTO Agri-Business Caféは、「新しい農業のカタチを考えるビジネス交流会」として、京都市が立ち上げた多様な主体が集まるプラットフォームです。
農家、企業、大学、金融機関など様々な事業者の皆さんが集まって、新たな農業関連ビジネスを生み出そうと取り組んでいます。

酒木さん|今年9月の“cafe”に参加したら、たまたま隣の席が市内で農業をされている中嶋直己さんで。私たちのフードロス対策の企画をお話したら「協力するよ!」と快諾していただきました。

酒木さんの熱意と、それを実現させようとする行動力には脱帽です。

そして酒木さんは、早速中嶋さんの農園に。
そこで出会ったサツマイモを生かした
スムージー作りに挑戦
することになりました。

酒木さんと中嶋農園の皆さん

農家さんの思い

中嶋さんは、京都市伏見区向島で4代続く農家。
米やサツマイモ、サニーレタスなど年間15品目の生産を行っておられます。

東京で企業に勤められたのち、2008年にお父様から農地を受け継ぎ、未来に続く農業を目指して、生ごみのたい肥化など様々な挑戦を続けておられます。

中嶋農園代表取締役 中嶋直己さん

中嶋さん|父の代から受け継いだレタス、サニーレタス、黒枝豆からはじめて、お客さん(飲食店など)からの要望に応えながら、栽培する種類を増やしてきました。

そして中嶋さんは、農業の担い手の育成にも取り組んでおられます。

中嶋さん|若い方でも安心して農業に従事していただけるように、2015年に法人化をしました。働き続けるには社会保険とか必要ですからね。農業を受け継いでもらう人材を育てることは大切です。

また、芋などの植付けや収穫は近所にある「就労継続支援A型事業所」から障害をお持ちの方に来ていただいています。
とても熱心に作業をしていただいて、無くてはならない存在です。


中嶋さんの作業所には、旬を迎えたサツマイモが。
品種は「紅はるか」
“ねっとり”とした食感と甘みが人気の品種です。
美味しそうなお芋に、気持ちもホクホクしてきます。

中嶋さんの畑で採れたサツマイモ

中嶋さん|サツマイモの栽培は5年ほど前からです。
飲食店から出る食品ロスなどを使って何かできないかと考えたのがきっかけです。米ぬかに混ぜてたい肥にして、無農薬のサツマイモの栽培を始めました。今でも雑草や害虫対策など、試行錯誤をしながら育てています。

様々な“つながり”を大切にしてこられた中嶋さん。
酒木さんとの出会いに「日本の将来は明るい!」と感じておられます。

中嶋さん|農作物を作って売るというだけではない、新しい価値を見出そうとしてくれています。若い方々の挑戦は温かい気持ちで応援していきたいです。こうした取り組みをきっかけに農業の魅力が広がって行けば嬉しいですね。

小さいものはたい肥に。採れたものは無駄なく使いきる

思いが詰まったスムージーを

酒木さん|サツマイモの素材を活かしたスムージー作りに力を入れました。プラントベースの食材を使用しているため、動物性の食材には頼らず、オーツミルクやメープルシロップを取り入れています。
実際にサツマイモを使用しながら、重くなりすぎないようスムージー感を出すことに苦労しました。

美味しさ求めて試作中!

こうして、中嶋さんが丹精込めて育てられたサツマイモと、酒木さんの情熱がこもった「サツマイモのスムージー」は、10月18日に開催の「小さな芝生広場の実験」で販売することが決定しました。

ところが、野外で行われるこのイベント。電源は?

そこで協力を申し出てくださったのが、京都日産自動車株式会社の皆さん。
SDGsを広めようと、京都市・亀岡市・大津市と、学生や地元企業・団体などが連携した「京滋SDGsプロジェクト」のつながりで、電気自動車を用意していただけることになりました。
さすが、国内のEV自動車のリーディングカンパニーです。

酒木さんの熱意にいろんな人が応えて形になっていく。
社会が少しずつ変わっていく息吹を感じます。


酒木さん|当日は中嶋農園の中嶋さんと一緒に参加します。
秋を感じられるスムージーをお楽しみください!
スムージーを楽しみながら食への関心、農業への興味を持つきっかけ作りができたらと考えています。

普段触れることの少ないプラントベースやフードロス等の「食の価値」を高めていく活動に、興味を持っていただけると嬉しいです。

また、この機会に京都のZ世代や学生たちが一緒に、サステナブルなアクションを起こすコミュニティーを形成したいです!

中嶋農園での見学の様子

【以下のイベントは終了しました】
たくさんの方にご来場をいただき、
ありがとうございました。

10/18(金)開催!「小さな芝生広場の実験」

京都市(都市計画局まち再生創造推進室)では、毎月第3金曜日に市役所前広場で、「小さな芝生広場の実験」を実施しています。

これは、人々が集い偶発的な出会いや交流から、新しい活動や価値が生まれるような「まちなかのサード・プレイス」を目指すもの。

毎月、いろんな人が集まって、“面白いこと”がたくさん生まれています。

今月は10月18日(金)に開催!

酒木さんと中嶋農園さんのスムージーも楽しめます!
多くの方の御来場をお待ちしています!!

【開催概要】
開催日:10月18日(金)
時 間:10時半~20時半(コアタイム17時~20時半)
場 所:京都市役所前広場
    京都信用金庫QUESTION(地下鉄「市役所前」すぐ)
ーー内容ーー
10時半~11時半
・ベビーカーでバレエエクササイズ
15時~19時(30分×2)
・「NAP(お昼寝)をテーマにしたダンスWS」
 ダンサー黒田健太氏
15時~
・モバイル屋台家さんによる活動
コアタイム(17時~20時半)
・芝生の上でくつろぐ・出会う
・ストリートピアノ
・スポーツパーク
・見えるまちかど対話
・大学生×農家=コラボジューススタンド
・マルシェ(ソフトドリンク、クラフトビール、駄菓子etc)
18時~19時半 ※QUESTIONで開催
・「2050年の京都コミュニティの未来」トークセッション
(市役所前広場でパブリックビューイングも実施)


📝ヒロ(市長公室広報担当)
広報担当2年目の職員。noteの取材で大学生によく出会います。皆さん、凄まじい情熱でまちづくりや社会課題の解決に取り組んでおられます。学生時代、鴨川の芝生で昼寝ばっかりしていた自分が恥ずかしい限りです。学生の皆さんは京都の活力。私もカメラを片手に追いかけます!すぐ息切れるけど…


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